こんにちは、平です。中国・広州在住17年目。アパレルOEM生産の現場に立ちながら、自社ブランド「Munny」の企画・生産・販売も自分たちでやっています。
OEM会社のサイトを見比べていると、「最低ロット300枚〜」という表記に何度も出会うはずです。これから自社ブランドを立ち上げる方や、まだ売上実績のないEC事業者にとって、この「300枚」は最初のハードルに見えると思います。今回は、この数字がどう組み立てられているのか、そして小ロットで動きたい方が取れる現実的な工夫について書きます。
「1型300枚〜」は単独の数字ではない
弊社の場合、生産ロットの目安として以下のように案内しています。素材のつくり方が違うので、カットソー・布帛(織物)とニット製品では条件が変わります。
カットソー・布帛(織物)の場合
- 1型300枚〜
- 1カラー40枚〜150枚ほど(素材によって変わります。後述します)
- 1サイズ20枚〜(20の倍数)
ニット製品の場合
- 1型300枚〜
- 1カラー50枚〜
- 1サイズ50枚〜(50枚以上であれば、枚数は問いません)
多くの方は「300枚」という最初の数字だけを見て「無理そうだ」と判断してしまいます。ですが実際は、型(デザイン)単位の300枚を、カラーとサイズという2つの階層に分解して積み上げられる数字です。1つの型を1色で作るのか、3色展開して組むのか、サイズ展開をS/M/Lの3サイズにするのか。組み方によって、300枚という総量への近づき方は変わります。
なお以降の数字は、生地メーカーが在庫として持っている生地を使う場合の条件です。オリジナル生地から開発される場合は、生地の種類ごとに最低生産メートル数が変わるため、別途お見積もりになります。
「1カラーの枚数」の出どころは、生地の反(たん)です
カラーの最小枚数は、工場が決めた規則ではありません。生地の買い方から自動的に決まります。
生地は「反(たん)」という単位で仕入れます。在庫生地の購入ロットは1反から。つまり1色作るということは、最低でも1反買うということです。1反から取れる枚数が、そのまま「1色あたりの最小枚数」になります。
1反に満たない量で買えないわけではありませんが、その場合は生地代にアップチャージがかかります。生地によっては2〜4倍の価格になり、そのまま商品原価に跳ね返ります。反で使い切れる枚数を最初から狙ったほうが、結果的に安く作れます。
ここで効いてくるのが、1反の長さは生地によって違うという点です。
- 夏物のTシャツ地 — 1反およそ100m。1色あたり150枚ほど
- 秋冬物のパーカー・トレーナー地 — 生地に厚みがあるぶん1反に巻ける長さが短く、およそ60m。1色あたり40枚ほど
厚い生地のほうが、1色あたりの最小枚数は小さくなるわけです。感覚と逆かもしれませんが、反あたりのメートル数で決まるので、こうなります。
つまりカラーの最小枚数は素材次第で40枚〜150枚の幅があります。秋冬の厚手アイテムなら、1色40枚ほどから色を1つ増やせるということです。展開色を多めに組みたい企画では、ここが効いてきます。
「1サイズ20枚(20の倍数)」は、裁断の回数の話です
サイズごとの単位を20の倍数でお願いしているのは、裁断工程を効率化するためです。
裁断は、生地を何枚も重ねた状態で一度に裁ちます。1枚ずつ裁つわけではありません。ここで端数が出ると、そのぶん裁断の回数が増えます。回数が増えれば工程の手間が増え、アップチャージにつながりやすくなります。
「Sを25枚」より「Sを20枚か40枚」のほうが素直に流れる、ということです。サイズ構成を決めるときに20の倍数を意識しておくだけで、余計なコストを踏まずに済みます。
「1型300枚」は、縫製工賃の話です
型(デザイン)単位の300枚は、また別の理由です。300枚は、縫製工場の縫製工賃がアップチャージされない最低数量です。
型を切る、仕立ての段取りを組むといった準備作業は、実際に縫う枚数が10枚でも300枚でも大きくは変わりません。数量が少なすぎると、この準備の手間が相対的に重くなります。
300枚を下回る生産をお受けできないわけではありません。ただし縫製工賃のアップチャージが発生するため、あまりおすすめはしていません。ここは工場やアイテムの仕様によって幅があるので、一概に「これ以下は絶対に無理」と言い切れるものでもありません。
ニット製品は、数字の決まり方がまるで違います
ここまでは、生地を買って裁って縫う、カットソーと布帛の話でした。ニット製品は、そもそも生地を買いません。
ニットは、データを編み機にセットして、機械でパーツを編みます。反の話が出てこないかわりに、別の制約が効いてきます。
サイズごとに、編み機に読ませるサイズデータを作る必要があります。そしてこのデータ作成には、1枚つくる場合でも50枚つくる場合でも、同じ時間の作業が必要です。1枚のために同じ工数をかければ、当然その1枚が重くなります。そのため、アップチャージが発生しない最低数量として**1サイズ50枚〜**と設定しています。
逆に、50枚を超えたあとは枚数を細かく刻んでいただいて構いません。「1サイズ50枚以上」さえ満たしていれば、55枚でも80枚でも問題ありません。カットソー・布帛のように20の倍数で揃える必要はないので、ここは企画の段階で分けて考えてください。
小ロットで動きたい方が取れる工夫
自社ブランドを立ち上げたばかりで、300枚をいきなり売り切る自信がない場合、実務的には次のような組み方をご相談いただくことが多いです。
- カラー数を絞る — 展開色を1〜2色に絞り、1色あたりの目安を使って300枚を埋める
- サイズレンジを絞る — フリーサイズや2サイズ展開にして、サイズごとの最小単位を積みやすくする
- 定番アイテムをコアに置き、段階的に展開色を増やす — 初回は最小構成で生産し、売れ行きを見ながら次のロットで色数を増やす
- 色数を多めに出したいなら、厚手素材のアイテムから入る — 前述のとおり厚手の生地は1反あたりのメートル数が短く、1色40枚ほどから組めます。同じ300枚でも「2色×150枚」より「6色×50枚」のほうが企画に合うブランドもあります
- サイズは20の倍数で組む(カットソー・布帛) — 同じ総量でも、端数を作らないだけで裁断の回数が変わります。ニットの場合は1サイズ50枚以上であれば端数は問いません
いずれも「300枚という目安自体を動かす」工夫ではなく、「300枚にどう無理なく届かせるか」という組み方の工夫です。ここは正直にお伝えしておきたいところで、魔法のように数量を減らせるわけではありません。ただ、型・カラー・サイズの組み合わせを最初から意識しておくだけで、企画段階の見え方はかなり変わってきます。
実際にどう組めば無理なく届くかは、扱うアイテムや素材によっても変わります。想定ロット数が固まっていない段階でも構いません。まずは資料請求フォームからご相談ください。
目安を下回る相談はできるのか
「うちはまだ100枚も動かせない」という段階のブランドもあると思います。資料請求フォームの数量選択に「〜100枚」という枠を設けているのは、目安を下回る相談を最初から締め出さないためです。
ただし、目安を下回る発注が必ず受けられるとは限りません。アイテムの仕様や工場の状況によってケースバイケースで、まずは条件を伺ったうえでの判断になります。「無理そうだから聞かない」より「まず聞いてみる」ほうが、次の一手が見えてくるはずです。
ひとつだけ先にお伝えしておくと、目安を下回る枚数で組む場合、一枚あたりの単価は上がります。いわゆるチャージアップです。
生地の余り、段取り替え、型代、検品の手間は、枚数が減っても同じだけかかります。減らないものを少ない枚数で割るので、一枚が背負う分が増える。それだけの話です。数量を下げて単価が据え置きになることは、構造上ありません。
そのため判断は「作れるか、作れないか」だけではなく、上がった単価でも成立する売り方があるかどうかになります。テスト販売で、その価格でも売れる見込みがあるなら十分に合理的です。逆に、原価を下げたくて数量を減らすのであれば、目的と手段が噛み合っていない可能性があります。そこも含めてご相談ください。
発注前に、数量以外で詰めておきたいこと
ロット数の話は、あくまで入口の話です。実際に発注を決めるうえでもっと効いてくるのは、仕様がどこまで詰まっているかだと感じています。以前の記事「縫製工場サンプル確認の現場 — 量産の品質はここで決まる」でも書きましたが、量産の品質はサンプル確認の段階でほぼ決まります。特にロットを小さく組んだ場合は、量産後に修正が効きにくいので、サンプルの往復を惜しまないことが結果的に近道になります。
まとめ
「1型300枚」という数字だけを見ると身構えてしまいますが、実際は型・カラー・サイズの組み合わせで動く目安です。そしてカラーとサイズの枚数は、カットソー・布帛なら生地の反と裁断の回数、ニットなら編み機のサイズデータという、それぞれ別の理屈で決まっています。自社の展開色数やサイズレンジと照らし合わせると、思ったより遠くない数字に見えてくることもあります。逆に目安を下回りそうな場合も、動く前に一度相談してみる価値はあります。
想定ロット数が固まっていなくても大丈夫です。まずは資料請求フォームで、扱いたいアイテムと数量感をお聞かせください。
